芸術

アート作品を「頭」でも鑑賞しよう

この記事では、アートの常識を考えていきたいと思います。

20世紀のアートの歴史は、過去のアートの常識からの解放でした。

「目に映る通りに描くこと」・「遠近法」・「具体物を描くこと」といった従来の常識に気づき、そこから脱出するなかで自分なりの表現を行ってきた歴史です。

 

今回は、「アートに最も影響を与えた20世紀の作品1位」に選ばれた、とあるアート作品を鑑賞しながらアートの常識について考えていきます。

このテーマについて教えてくれるのは、末永幸歩(すえなが ゆきほ)さんの著書「13歳からのアート思考」の「CLASS 4 アートの「常識」ってどんなもの ?」です。

 

では早速中身を見ていきましょう。

 

■「アートに最も影響を与えた20世紀の作品1位」の作品とは?

取り上げるアート作品は、「マルセル・デュシャン(1887~1968)」というフランスのアーティストの「泉」という作品です。

【マルセル・デュシャン】

 

英語表記のタイトルは≪Fountain≫。「噴水」の意味に近いようです。

早速作品を見てみましょう。

 

【泉】

 

「泉」は、美術史上重要な作品として認知されており、2004年にイギリスで行われた専門家500人による投票で「アート界に最も影響を与えた20世紀のアート作品」の1位に選ばれています。

なぜなのでしょうか。

 

■「泉」はアート作品を視覚芸術から解放した

実は、この作品は「男性用の小便器」に「R.Mutt」とサインをしただけのものです。

この作品が発表された当時、マルセル・デュシャンは30歳で既にアーティストとして一定の評価を受けていました。

しかし、この「泉」という作品に対しては、「この作品はアートではない」とみなされ、世の中を騒がせる問題作となりました。

なぜ、マルセル・デュシャンはこのような作品を発表したのでしょうか。

 

 

これは、マルセル・デュシャンが「アートは視覚で愛でることができる表現であるべきだ」という常識を打ち破りたかったからです。

この「泉」という作品には、視覚で愛でることができる要素がことごとく排除されています。

なにせ「男性用の小便器」ですからね。

マルセル・デュシャンは「アートは美を追求するべきか」という疑問に対して自分なりの答えを「泉」に込めたのです。

つまり、それまで誰も疑うことのなかった「アート作品=目で見て美しいもの」というあまりにも根本的な常識を打ち破り、アートを「思考」の領域に移したのです。

ここにこの作品の影響力があり、「アート界に最も影響を与えた20世紀のアート作品」として評価されることとなったのです。

 

■「泉」からどのような「思考」が生まれるのか

「泉」を見た時に、「これはなんだろう??」とか「これがなぜアートなんだろう??」と考えるでしょう。

これこそがマルセル・デュシャンの狙いです。「受動的だったアートを能動的なアートへと昇華させ、鑑賞者に考えさせる。」

現代アートではこの考えが基本となり、新たなスタイルやアート作品が生まれ続けています。

 

■アート作品を「頭」でも鑑賞しよう

マルセル・デュシャンの「泉」から、アートの常識を考えてみました。

私個人としては「泉」は家にはいらないです。

ただ、「考えさせる作品」であることはよく理解できましたし、それまでの常識を打ち破り新たな領域を見せてくれたという点で価値ある作品ということも理解できました。

アート作品を鑑賞するときは「目」だけではなく「頭」でも鑑賞する。

それが、現代を生きる私たちのアート作品の味わい方だということを胸に刻むことができました。

 

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