経営

エージェンシー理論からコーポレート・ガバナンスを考える

この記事ではエージェンシー理論について取り上げます。

エージェンシー理論は「自分以外の誰かに何かを依頼する」際に必ず発生するもので、理解しておきたい理論の一つです。

このエージェンシー理論を教えてくれるのは、入山章栄(いりやま あきえ)さん著書の「世界標準の経営理論」の第6章「情報の経済学②(エージェンシー理論)」の部分です。

 

では、内容の要約を行って「エージェンシー理論」について理解していきましょう。

 

■エージェンシー理論とは

エージェンシー理論とは、経済主体(プリンシパル)が特定行為を代理人(エージェント)に依頼した際に発生する問題(モラルハザード問題)の対処法を考える理論のことです。

言葉の定義だけみてもよくわかりませんので、具体例をいくつか出して考えてみましょう。

 

■エージェンシー理論の例

エージェンシー理論の例1:管理職と部下

経済主体(プリンシパル):管理職
代理人(エージェント) :部下
特定行為        :一生懸命に働く

管理職は部署の目標を達成するために、部下に対して懸命に働くことを依頼しますが、部下は必ずしも懸命に働くとは限らず、サボる可能性があります(利害の不一致)。

サボる部下を監視しようにも、管理職はなかなか部下一人ひとりの行動を把握できません。(情報の非対称性)

 

エージェンシー理論の例2:経営者と管理職

経済主体(プリンシパル):経営者
代理人(エージェント) :管理職
特定行為        :可能な限り高い成績を上げる

経営者は管理職に対し、可能な限り高い成績を上げる依頼しますが、管理職は、例えば年内の予算を達成したらその期は無理をせず、今季売り上げられる案件をわざと来期に回すかもしれません。(利害の不一致)

また、管理職を監視しようにも、経営者はなかなか管理職一人ひとりの行動を把握できません。(情報の非対称性)

 

エージェンシー理論の例3:株主と経営者

経済主体(プリンシパル):株主
代理人(エージェント) :経営者
特定行為        :株主価値を最大化するような経営を行う

株主は経営者に対し、株主価値を最大化するような経営を行うように依頼しますが、経営者は、企業の成長など収益率以外の目的も目指しがちになります。(利害の不一致)

また、株主は経営者の行動を完全に把握することができません。(情報の非対称性)

 

■エージェンシー理論とコーポレート・ガバナンスの関係

上記「エージェンシー理論の例3:株主と経営者」でみたように、株主と経営者の間には両者の「利害の不一致」と「情報の非対称性」があるために、「モラルハザード問題」を抱えています。

この「株主と経営者の間のモラルハザード問題」の解消を目指すのが「コーポレート・ガバナンス」です。

 

■コーポレート・ガバナンスで株主と経営者の間のモラルハザード問題をどのように解決するのか

①モニタリングによる解決法

モニタリングとは、経済主体(プリンシパル)が代理人(エージェント)を監視(モニタリング)する仕組みを取り入れて、「情報に非対称性」を解消しようとするものです。

コーポレート・ガバナンスで代表的なモニタリング手法は以下の2つです。

 

解決法1:「物言う株主」によるモニタリング

機関投資家などが企業に対して経営陣の刷新や自社株買いなどを要求することや、大株主などの発言権のある経済主体(プリンシパル)が取締役会に人を送り込むことなどがこれに当てはまります。

ただし、大株主しかこのようなモニタリングを実施できないため、少数株主の利益が損なう可能性があります。

 

解決法2:社外取締役・社外監査役の導入

企業が外部から取締役や監査役を受け入れることもモニタリングとして機能します。

社外取締役・社外監査役は株主ではありませんが、外部の目が入ることで企業の透明性が高まり、株主(プリンシパル)に対する「情報の非対称性」の解消が期待できます。

ただし、経営者の知り合いが「社外取締役・社外監査役」として選任されると経営者に甘くなる可能性があるため、実質的に機能しているか留意が必要です。

 

②インセンティブによる解決法

経済主体(プリンシパル)が代理人(エージェント)間の「利害の不一致」を解消しようと考えるのがインセンティブによる解決法です。

 

解決法1:業績連動型の報酬

経営者の報酬に業績連動の要素を組み込むことで、株主と経営者の「利害の不一致」を解消しようとするものです。

 

解決法2:ストック・オプションの付与

ストック・オプションとは、「数年後に自社の株価があるレベルまで達成すれば、その株をあらかじめ定めた低い金額で購入できる」権利のことです。

ストック・オプションを経営者に付与することで、経営者は株価を増大させるインセンティブが生まれるため、株主と経営者の「利害の不一致」を解消できるというわけです。

しかし、ストック・オプションの付与には副作用もあって、経営者が粉飾により株価を増大させるインセンティブを高めることにもなってしまいます。

 

■日本で最も良いコーポレート・ガバナンスは、「経営者が婿養子の同族企業」

ここでは同族企業を「創業家が大口の株主で、その創業家一族から経営陣に人が送られている企業」と考えます。

日本の上場企業の約3分の1が同族企業ですが、「世界標準の経営理論」によると、多くの実証研究で業績は「同族企業 > 非同族企業」なのだそうです。

また、同族企業の中で特に業績がよいのが「経営者が婿養子の場合」なのだそうです。

 

これは、これまで見てきたエージェンシー理論と整合的です。

モラルハザード問題が発生するのは、経営者と株主との間に「利害の不一致」と「情報の非対称性」が生じるためでした。

これが、同族企業となると「経営者=主要株主」となり利害が一致しますし、情報の非対称性も生じません。

また、同族企業の場合は創業家に優秀な人材が常にいるかどうかわからないリスクがありますが、婿養子には時間をかけて社内外から選び抜かれた人が迎えられることになるので、その心配もありません。

「経営者が婿養子の同族企業」は優秀なコーポレート・ガバナンスといえます。

 

 

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