経営

情報の非対称性を味方につけよう

この記事では情報の非対称性について考えていきたいと思います。

情報の非対称性とは、「書い手・売り手のどちらか一方だけが特定の情報を持ち、もう一方がその情報を持っていない状況」のことです。

英語では「information asymmetory(インフォメーション アシンメトリー)」と言います。

インターネットの普及・IT化により、今までよりも容易に情報を手に入れられる状況になっています。

しかし、「情強」・「情弱」という言葉が存在しているように、全ての人が同じ情報を持っているわけではありません。

この記事では情報の非対称性が人の意思決定にどのような影響を与えるのかを見たうえで、それに対してどのような対策をとるべきかについて述べていきます。

■情報の非対称性の例

アカロフのレモン(中古車)市場

情報の非対称性で有名な例として、「アカロフのレモン市場」があります。

「アカロフのレモン市場」とは、アメリカの経済学者アカロフが1970年に経済学術誌「クウォータリー・ジャーナル・オブ・エコノミクス」に発表した論文で紹介した例です。

レモンとは、英語の俗称で中古車のことです。

参考:The Market for “Lemons”: Quality Uncertainty and the Market Mechanism (レモンのための市場: 品質の不確実性と市場メカニズム)

話の流れは以下のようなものです。

①中古車市場に売り手(営業マン)と買い手(顧客)がいる

②営業マンには、正直な営業マン(中古車の本当の価値通りの値付けをする営業マン)と虚偽表示をする営業マン(中古車の本当の価値よりも高い値付けをする営業マン)がいる

③営業マンは販売する中古車のすべての情報を知っているが、顧客はその情報を知らない(= 情報の非対称性)

④顧客は、「合理的な行動」の結果として営業マンに値下げ要求をする(なぜならば、顧客は「営業マンが情報を隠して本当の価値よりも高い価格を提示する可能性がある」と考えるため)

⑤正直な営業マンは取引が成立しなくなるため、市場から撤退する

⑥虚偽表示をする営業マンしか市場にいなくなる(=アドバース・セレクション:逆淘汰・逆選択)

 

保険

アカロフのレモン(中古車)市場では、売り手(営業マン)が情報を持っていましたが、逆に買い手が情報を持っている場合があります。

その例が保険です。自動車保険を例にとって考えてみましょう。

 

【自動車保険における情報の非対称性】

①この世には「不注意で自動車事故を起こしやすい人」と「注意深くて自動車事故を起こしにくい人」がいる

②「不注意で自動車事故を起こしやすい人」ほど自動車保険に入りたがる

③保険会社は、保険を申し込む人が不注意な人がどうかはわからないため、結果としてすべての人に高い保険料を設定せざるを得ない

④「注意深くて自動車事故を起こしにくい人」にとって、自動車保険の保険料は割高になるため、保険に加入しない

⑤「不注意で自動車事故を起こしやすい人」だけが保険に入ることになる。

 

情報の非対称性の解決手段

このように、情報の非対称性が存在すると、本来なら成立するはずの市場取引が成立しないことが起こりえます。

結果、多くのビジネス・プレイヤーに不利益を被ることになります。

では、情報の非対称性を解消するにはどのような手を打てばよいのでしょうか。

経営学では以下の手段が情報の非対称性の解消手段として挙げられています。

 

スクリーニング

スクリーニングとは情報を持っていない側がとる手段で、顧客に選択しを与えることで顧客が勝手に自らの情報に基づいた行動をとることにより、アドバース・セレクション(逆淘汰・逆選択)を解消しようというものです。

 

スクリーニングの具体例1 保険

以下の2つの保険を用意する
①保険料は安いが事故になった時の保障額が安い保険
②保険料は高いが事故になった時の補償額も高い保険

この結果、「注意深くて自動車事故を起こしにくい人」は「①保険料は安いが事故になった時の保障額が安い保険」を選択でき、保険会社は「注意深くて自動車事故を起こしにくい人」を逃さずに済むことができます。

 

スクリーニングの具体例2 ハンバーガーのファストフード店

割引のクーポンを使う。

(クーポンを使うことで、「少しでも安く食べたい」という客はクーポンを使うことができるし、「ハンバーガー程度なら価格は気にしない」客はクーポンを使わないため、結果的にそれぞれの客層に異なる価格を提示することができる)

 

シグナリング

シグナリングは情報を持っている側がとる手段で、情報を持っていない側に対して自分の情報の代わりに「わかりやすく顕在化したシグナル」を送ることで情報の非対称性を解消しようとすることです。

具体例としては、就職市場において志望者が「学歴」を提示することや、企業が情報開示(コーポレート・ディスクロージャー)を積極的に行うこと、企業が外部機関の認証を取得する(環境関連の認証であるISO14001を取得する)ことなどです。

 

情報の非対称性を味方につけよう

今までは情報の非対称性を「問題」のように取り扱いましたが、逆にチャンスになることもあります。

分かりやすい例としては、非上場企業のM&Aです。

非上場企業は開示される情報が少なく、非上場企業の内部と外部で情報の非対称性があります。

そこで、買収しようとする非上場企業に対する「目利き」ができれば、他のライバルを出し抜くことができるということです。

この目利き力が強い経営者として有名なのは日本電産の永守重信氏です。

永守氏はあえて規模が小さく業績も悪い会社を狙って長期間買収を続けてきたことで有名です。

永守氏がこれまでのモーター製造関連業界で培った知見をもって買収対象会社を調べその会社の「本当の価値」を見抜いてきたのです。

参考:日本電産株式会社HP M&Aの歴史

その結果、日本電産は大きな成長を遂げてきました。

 

あとは、「海外の流行をいち早く日本に輸入して展開すること」も「情報の非対称性」を味方につけることになります。

ソフトバンクの孫正義氏の経営手法もまさにこれに当てはまります。

このように、情報の非対称性が存在していることを認識しそれを味方につけることができれば自分のビジネスを大きく発展させることができます。

経営学の教養としてぜひ覚えておきたい内容です。

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